学会活動等

【論文資料】精神科救急病棟の病床数制限に関するアンケート実施報告

(図1)

精神科救急論文資料佐藤-1

削減対象病院の平成29年6月中の新規入院患者の退院率は、3か月経過時点で65%(全国病院比+7ポイント)、6か月経過時点で91%(全国病院比+12ポイント)、12か月経過時点で96%(全国病院比+9ポイント)となっており、各経過時点において削減対象病院の退院率は全国病院を上回っている。
また、第2回精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会で示された第6期障害福祉計画の成果目標案と比較すると、削減対象病院は既に6か月時点と12か月時点の退院率の目標を達成している。

(図2)

精神科救急論文資料佐藤-2

平成29年6月中に削減対象病院の精神科救急病棟に新規入院となった患者の退院率をみると、3か月、6か月、12か月経過時点において病床数が多くなればなるほど退院率が上昇している。
第6期障害福祉計画の成果目標案との比較でみると、既に自治体病院と150床以上病院は各経過時点で成果目標案を上回っており、6か月経過時点及び12か月経過時点では、全ての削減対象病院が成果目標案を上回っている。
以上のエビデンスより、成果目標案の達成には精神科救急病棟での入院治療が有効であり、特に、精神科救急入院料の病床数が多いほど成果目標案の達成には有力であると言える。

(図3)

精神科救急論文資料佐藤-3

調査時点は相違しているものの、平成30年度中に削減対象病院の全ての病棟を退院した後の再入院率を、公表値と比較すると、すべての時点で削減対象病院の再入院率が低い。
(「第1回精神保健福祉の養成の在り方等に関する検討会、平成30年12月18日、資料2」から引用)

(図4)

精神科救急論文資料佐藤-4

削減対象病院の精神科救急病棟退院後の再入院率をみると、退院後30日時点では100~150床未満病院が最も低いものの、退院後60日を超え1年以内の全時点において病床数が多くなるほど再入院率が低くなっている。
以上のエビデンスにより、精神科救急入院料の病床数が多いほど再入院率が低くなっている実態が判明した。
なお、自治体病院の再入院率は、150床以上病院と同様の退院率で推移している。

(図5)

精神科救急論文資料佐藤-5.

2018年度における削減対象病院1病院あたりの精神科救急入院料の施設基準である時間外、休日又は深夜における診療件数は643件(4.2病棟分)、うち初診件数が196件(6.5病棟分)、時間外、休日又は深夜は226件(5.6病棟分)となっている。
当該施設基準要件と削減対象病院の内訳をみると、自治体病院の実績値は削減対象病院の平均値に近い。
また、精神科救急入院料の病床数が多いほど夜間・休日日中の診療件数、初診件数、入院件数が多くなっており、精神科救急入院料の病床数と夜間・休日日中の診療件数、初診件数、入院件数とは明らかな相関が認められる。

(図6)

精神科救急論文資料佐藤-6

2019年度における削減対象病院1病棟あたりの精神科救急入院料の施設基準である時間外、休日又は深夜における診療件数(以下「時間外等外来件数」という。)は259件(基準の1.7病棟分)、うち初診件数が77件(2.5病棟分)、時間外、休日又は深夜における入院件数(以下「時間外等入院件数」という。)は86件(2.1病棟分)となっている。
当該施設基準要件と削減対象病院の内訳をみると、自治体病院の実績値は削減対象病院の平均値に近く、また精神科救急入院料の病床数と夜間・休日日中の診療件数、初診件数、入院件数に明らかな相関は認められないが、いずれも150床以上病院が最も多く、150床以上病院は病院単位だけでなく病棟単位でも、夜間・休日日中の診療件数、初診件数、入院件数が最も多くなっている。

(図7)

精神科救急論文資料佐藤-7

削減対象病院のうち80.0%で病床削減が行われている。また国内の精神病床は過去15年間で35.8万床が31.8万床に減少(減床率11.1%)しているが、削減対象病院は既に22.3%の病床削減を行っており、その変化率は2倍を上回る。
国の方針である精神科病床数削減が、精神科救急・急性期医療の強化に伴う入院期間の短縮化により、削減対象病院において成功しているといえる。

(図8)

精神科救急論文資料佐藤-8.

平成29年度における削減対象病院の患者1人あたりの医療費(区分:精神及び行動の障害)を全国病院と比較すると、削減対象病院が2,642千円、全国病院が4,681千円となり、削減対象病院が2,039千円低い結果となった。
また、患者1人あたりの医療費と精神科救急入院料の病床数との相関をみると、明らかな逆相関が認められた。この要因は、精神科救急入院料の病床数と平均在院日数との間にも逆相関が認められていることにあり、精神及び行動の障害分野では、精神科救急入院料の病床数、平均在院日数、患者1人あたりの医療費とは強い相関があると言える。

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