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精神科救急医療体制に関する声明

2021年1月16日

精神科救急医療体制に関する声明

ー精神科救急入院料病床上限の見直しを求めますー

公益社団法人日本精神神経学会        理事長    神庭重信
精神医療・保健福祉システム委員会 委員長 太田順一郎

近年、精神科救急医療システムの構築・整備の重要性はますます高まっています。これに対応するため、厚生労働省は平成8年度から精神科救急体制整備事業を実施し、また平成 22 年の精神保健福祉法改正時には法第 19 条の 11 において精神科救急医療の提供に関する自治体の役割が明確化されました。それぞれの自治体において精神科救急輪番制の整備や精神科救急情報センターの設置が行われ、精神科救急入院料病床が各地に整備されるなど、地域差はありますが、精神科救急医療体制の整備が徐々に進んできたと言えます。

令和 2 年 3 月から厚生労働省が開催している「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」はその重点的なテーマの 1 つとして精神科救急体制の充実を掲げており、同年 8 月には「精神科救急医療体制整備に係るワーキンググループ」を発足させて、地域精神保健活動やアウトリーチ機能の充実を含むより広い意味での精神科救急医療体制の整備について検討を進めています。

一方で、平成 30 年度の診療報酬改定により精神科救急入院料の病床上限が「300 床以上の病院では全病床の 20%以下、それ以外は 60 床まで」とされ、これによって少なからぬ地域において精神科救急入院料の病床が削減されることが見込まれています。これまで精神科救急入院料病床は、①急性増悪・急性発症への即時・適切な介入、②長期在院の防止、③多様な精神疾患への対応体制の構築、といった意義を有することが明らかにされており、この病床が削減されることはそれぞれの地域において今日まで構築されてきた精神科救急システムに綻びを生じ、ひいては地域医療の崩壊に繋がることが懸念されています。

また、今回の診療報酬改定は、結果としてより少数の医師、看護師等の医療従事者で救急・急性期患者に対応することに繋がり、精神科医療の質や安全性を低下させ、隔離や身体的拘束等行動制限を増加させるなど、「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」と齟齬をきたす可能性があります。

これまで各都道府県には、地域の事情に応じてそれぞれ独自の精神科救急医療体制を整備してきた歴史があります。精神科救急入院料病床もその重要な構成要素です。地域の実情を無視して、濃厚治療を行う病床を一律に削減させるように求める今回の改定は、患者が地域で安心して生活するためのシステムづくりの流れに逆行するものと言わざるを得ません。

今回の診療報酬改定は移行措置の期限が定められており、令和 4 年度から発動予定となっています。日本精神神経学会は精神科医療に関する基幹学会として、移行措置期限を延長した上で、精神科救急入院料の病床上限を見直すよう求めます。

 

◆声明が発信された日本精神神経学会のサイトはちらからご覧いただけます。
公益社団法人日本精神神経学会HP ≫ 見解・提言・声明 ≫ 2021年

 
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